Fukumoto International Patent Office


米国出願に準備すべき書類〜直ぐに役立つ米国出願への対処法〜




            福本 2007年9月作成・2009年12月最終更新

 特許主要国の中で米国は、出願書類が多いのが特徴の1つと言えます。一番多い米
国の出願書類を把握しておけば、他の国々には楽に対応することができます。そこ
で、米国の出願書類と、関連する留意事項とについて、ご紹介致します。明細書・図
面の作成については、「外国出願を見据えた特許明細書の書き方」をご参照下さい。

  I. 米国出願に必要な書類のすべて

米国出願に必要な提出書類は、以下の通りです。

1. 出願データシート(提出は任意です)

・ 出願人、通信宛先、出願情報、代理人情報、優先権情報、譲受人情報などを記載
します。

・ 他の書類と齟齬あるときは、最新に提出した方が優先します。同時提出であれば
(発明者およびその国籍を除いて)データシートが優先します。したがって、記載は
慎重にする必要があります。

2. 英文の明細書(クレーム、要約書を含みます)

3. 図面(通常は必要となります)

4. 宣言書(Declaration)

・ 各発明者が「自身が最先発明者であると信じていること」、「出願の内容を検討
し理解していること」、「情報開示義務があることを認めること」を宣言します。

・ 優先権の基礎出願(先の日本出願)の情報を記載します。

5. 委任状(Power of Attorney)

・ 各発明者(or譲受人)が特定の米国代理人を任命する旨の表示です。

6. 譲渡証(Assignment)

・ 各発明者が発明を会社等に譲渡した旨の証書です。

7. 優先権証明書(登録料納付までに提出可)

・ 優先権の基礎出願(先の日本出願)について特許庁の認証ある謄本を提出しま
す。

・ 但し、平成19年7月28日(米国東部時間)以降の米国出願については、提出
不要となりました。詳細は、下記II.をご参照下さい。

8. 情報開示陳述書(IDS)

・ 発明者等が知っている特許性に重要な公知文献等を提出するものです。詳細は、
下記III.をご参照下さい。

  II. 優先権証明書の提出

米国出願についての優先権証明書の提出については、以下の通りです。

・ 従来は、優先権の基礎出願の認証謄本は、登録料を納付する時までに提出する必
要がありました。

・ また、審査の過程で、日本出願後で米国出願前の公知文献を排除するために優先
権を援用する場合には、そのときに提出する必要がありました。

・ しかし、平成19年7月28日(米国東部時間)以降の米国出願については、欧
州(EPO)と同じように、日本出願のコピーの提出は不要となりました。EPOと同様に米
国特許庁とも、日本特許庁が出願データの電子的交換を行うことになったためです。

・ 平成19年7月28日(米国東部時間)より前に既に優先権主張を行っている米
国出願についても、米国特許商標庁に対して、優先権書類データ入手依頼届
(PTO/SB/38)を提出することで、日本出願のコピーの提出を省くことができます。
優先権書類データ入手依頼届(PTO/SB/38)の受付は、日本時間平成19年7月29
日(米国東部時間7月28日)から開始されています。

・ 優先権の基礎出願の翻訳文は、原則として求められません。ただし、審査の過程
で、日本出願後で米国出願前の公知文献を排除するために優先権を援用する場合に
は、提出する必要があります。

 《参考:欧州(EPO)での優先権証明書の提出》

・ 原則として、第1国出願(優先権の基礎出願)のコピーは、第1国出願の日から
1年4月以内に提出する必要があります。

・ ただし、日本出願が基礎出願の場合には、日欧の取り決めにより、提出不要とな
っています。欧州出願をするときに、願書に日本出願の出願番号を記載して優先権の
主張をしておれば、該当する出願のコピーをEPOが日本特許庁に請求し、日本特許庁
が出願データをEPOに送付することになっています。

・ 日本の出願人様の場合には、ほとんどは第1国出願が日本出願であるため、基礎
出願(日本出願)のコピーの提出は不要となります。

・ 審査官が特許しても良いと判断した場合には、「特許付与の予告通知」が審査官
から届きます。特許しようとする明細書の内容の承認、登録料の納付などを求める通
知であり、応答期間は4ヶ月です。ただし、2ヶ月の延長が可能です。従来は、この
応答期間内に日本出願の翻訳文を提出する必要がありました。

・ 欧州出願自体が日本出願の完全な翻訳文になっておれば(つまり、日本出願から
の書換えがなければ)、その旨の宣誓をすることで、翻訳文に代えることが可能で
す。この宣誓は、欧州出願の願書に所定の記載をすれば足ります。

・ しかし、EPC2000の施行(2007年12月13日)の後は、優先権証明書の翻訳文の提出
は不要となりました。(「特許付与の予告通知」から優先権証明書の提出まで4箇月
の期限が与えられますので、発送日から10日後に受領されたものとみなす「10日則」
を考慮すると、2007年8月3日の前日の時点で「特許付与の予告通知」が未だ発送され
ていなかった係属中の出願についても、翻訳文の提出は不要となります)。

 ただし、日本出願後に公開された先行技術文献との関係で、優先権の有効性が問題
となり、欧州特許庁(EPO)から要求があった場合には、そのときに提出が必要と
なります。その場合に、欧州出願自体が日本出願の完全な翻訳文であれば、その旨の
宣誓をすることで、翻訳文提出に代えることが可能です。日本出願と欧州出願との間
で実質的相違のない場合、すなわち特許請求の範囲に変更が無く、明細書に新規事項
の追加も無い場合であっても、明細書中の見出しの有無や変更、「符号の説明」など
一部の記載の削除など、形式上の相違がある場合が通例と思われます。翻訳文の完全
性は厳格に判断されますので、翻訳文の提出に代えて宣誓で済ますことのできる場合
は通常無いのでは、と思われます。

  III. 情報開示陳述書(IDS)の提出

米国出願特有のIDSの提出については、以下の通りです。

・ 特許出願の提出及び手続に実質的に関与する者(発明者、譲受人、国内・米国弁
理士など)は、出願から特許発行までの間、自身が知っている特許性に重要なすべて
の情報を米国特許庁に開示する義務を負います(施行規則)。

・ 重要な情報を、米国特許庁を欺く意図をもって提出しなかった場合には、特許無
効または権利行使不能とされます。重要な情報とは、合理的な審査官が出願を特許す
べきか否かを決定する際に重要と考えたはずのもの、と解されています。ただし、重
要な情報であっても、既に審査官が考慮した情報と重複するか、又はそれよりも関連
性が低いのであれば、重要とは解されません。

・ 知っている先行技術、関連する先願、日本や他国の対応出願の特許審査・調査報
告書(PCT・EPC)で引用された文献などは提出すべきです。

・ 優先日(日本出願日)後の公開文献であっても、米国出願日前のものは提出する
必要があります。優先権の有効性自体も審査対象であるからです。

・ 出願から3月又は第1回拒絶理由通知までのうち遅い日までは、無料で提出する
ことができます。手続の簡素化のために、出願時に提出するのが望ましいものと考え
ます。

・ 出願後に知った文献(例えば、 米国出願後に日本や他国の審査で引用された文
献)は、3月以内に提出しなければなりません。最後の拒絶理由通知(Final O.A.)後
の提出は、有料となります。

・ 提出すべき書類は、以下の通りです(施行規則)
(1) 文献の一覧
(2) 文献のコピー (米国特許・米国出願公開公報のコピーは、米国特許庁から求め
られなければ不要です)
(3) 非英語文献では関連性についての説明
(4) 非英語文献は、関連部分の英訳

  IV. その他の米国出願特有の留意点

その他の米国出願特有の留意点として、以下の事項を挙げることができます。

1. 発明者の認定を厳格に行う必要があります。欺罔の意図あれば、特許無効また
は権利行使不能とされるからです。

・クレームの補正の度に、発明者に変更あれば発明者の補正が必要です。

・クレーム毎に発明者を認定しておくと良いでしょう。

・補正は、(1) 所定の「発明者訂正申請書」を提出することにより行います(施行規
則)。

・発明者が増えるときは、さらに
(2) 欺罔の意図によるものでない旨の陳述書、
(3) 発明者による宣言書、
(4) 譲受人の同意書、が必要となります。

2. 「参照組み込み(incorporation by reference)」という制度があります。

・他の文献を特定して、”the contents of which are hereby incorporated by
reference”と明細書中で宣言することにより、文献の内容を出願明細書の一部とす
ることができます。

・クレームとの関係により、特許法§112第1パラグラフの要件(記述要件、実施可
能要件、ベストモード要件)を充足するために必要な内容は、出願後の補正で明細書
中に写し込む必要があります。ただし他の文献が、米国特許又は公開された米国出願
である場合には、その必要はありません。他の文献が米国特許又は公開された米国出
願である場合であっても、必要な内容について、それらがさらに他の文献を「参照組
み込み」している場合には、出願明細書への写し込みが必要となります。

・改正施行規則§1.57 (2004年10月21日施行)によると、優先権を主張すれば、基礎
出願の内容は自動的に「参照組み込み」されたものとして扱われるものと、理解する
こともできそうです。そうであれば、「参照組み込み」の宣言が無くても、優先権主
張の基礎とされる日本出願に基づいて、誤訳の訂正をすることが可能である、と解す
ることができます。しかし施行規則の該当箇所には、明細書・図面の全部又は一部
が、故意ではなく不注意により脱漏した場合(inadvertent omission)には、優先権
の主張がなされておれば、基礎出願の内容が参照組み込みされたものとみなされる、
と規定されており、適用範囲が幾分限定的とも読めます。あらゆる誤訳に対して、基
礎出願に基づく訂正が可能であると断言できるか、幾分かの疑問が残ります。安全側
に立つならば、誤訳の訂正を確保するためには、優先権主張を伴う場合であっても、
基礎出願について「参照組み込み」の宣言をしておくのが望ましいかもしれません。


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