Fukumoto International Patent Office


国際出願(PCT出願)の手続〜国際段階〜



            福本 2010年4月5日作成 2012年12月更新

 国際出願書類に瑕疵がなく、補完命令(国際出願日が付与できないほどの重大な瑕
疵があった場合で、適正な手続補完書が受理官庁へ到達した日が国際出願日となる)
も、補正命令(国際出願日の付与には問題のない程度の瑕疵があった場合で、付与さ
れた国際出願日は手続補正書の提出によっても繰り下がらない)も送付されない通常
の場合には、国際出願とそれに付随する手続(手数料の納付、委任状の提出、優先権
証明書の提出など)の後、各国内段階への移行手続までの中間段階の主なイベントは、
(1)国際調査報告、(2)国際公開、及び(3)国際予備審査の3つです。

 昨年(2009年)1月1日からは、(4)補充国際調査の制度も開始されました。
このうち、(3)国際予備審査、及び(4)補充国際調査は、全ての国際出願が対象
であるわけではなく、出願人の意思により請求がなされた場合のみ行われます。

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 ・以下は、特許庁・平成21年度知的財産権制度説明会(実務者向け)テキス
  ト「PCT国際出願の手続」を参考にしています。
  最新版が、特許庁ウェブサイトの次のページ:
   http://www.jpo.go.jp/torikumi/ibento/text/h24_jitsumusya_txt.htm
  に、「特許協力条約(PCT)に基づく国際出願の手続」の名称で、アップロー
  ドされています。
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 以下では、特許庁問合わせへの回答内容をも盛り込んでおりますが、担当官さんの
1回限りの電話回答に過ぎません。回答内容をも含めて、以下の記載内容に誤りがな
いことを保証するものではない点、ご了承下さいますよう..

1.国際調査報告

・国際調査とは、国際出願について国際調査機関が関連のある先行技術を発見する為
 に行う調査で、すべての国際出願が対象となります。調査の結果を示す「国際調査
 報告」(上記特許庁テキストの様式【3−2】)とともに、特許性に関する意見を
 述べた「国際調査見解書」(様式【3−3】)が作成され、出願人に送付されます。
 それらと同時に、「送付の通知書」(様式【3−1】)が送付されます。

・「国際調査報告」及び「国際調査見解書」は、優先日(優先権主張があれば先の出
 願の日、優先権主張がなければ国際出願日)から9箇月、又は国際調査機関による
 調査用の写しの受領から3箇月のうち、いずれか遅く満了する期間内に作成され
 (PCT規則42.1, 43の2.1)、出願人及び国際事務局に同日に送付されます(PCT規
 則44.1)。

・国際調査機関は、国際出願が発明の単一性を満たしていないと認めたときには、出
 願人に対し追加手数料の納付を命じます。命令の日(発送日)から1箇月以内に、
 「手数料追加納付書」【様式4−1】により追加手数料を納付します。「手数料追
 加納付書」には、特許印紙を貼付します。追加手数料は、1発明につき、
 78,000円です。

・出願人は、命令に異議があれば、「手数料追加納付書」と同時に「陳述書」(様式
 【4−2】)を提出することにより、異議を申し立てることができます。異議があ
 っても、「手数料追加納付書」により全額を納付し、それと同時に「陳述書」を提
 出するのでなければなりません。異議申立の手数料は(国際調査機関としての日本
 特許庁については)求められません。

・追加手数料異議の申立は、3名の審査官の合議体により決定され、決定の謄本が申
 立人に送付されます。追加手数料の全部、又は一部を申立人に返還すべき旨の決定
 があれば、申立人は、「既納手数料返還請求書」(様式【2−27】)を提出する
 ことにより、返還の請求をすることができます。返還の請求無しでは、返還はして
 くれません。

・「国際調査報告」、「国際調査見解書」を受け取った出願人は、請求の範囲につい
 て補正をすることができます(PCT19条(1)に基づく補正;実務上「19条補正」と
 称されます)。19条補正は、国際調査報告の送付日から2箇月、又は優先日から
 16箇月のいずれか遅く満了する期間内に、1回に限って行うことができます。

・「19条補正」には「19条補正についての説明書」を付することができ、「19
 条補正」とともに、あるいは単独で、「国際調査見解書」に対する反論として「非
 公式コメント」を提出することもできます。これらの書類はすべて、国際調査機関
 (日本特許庁)ではなくスイス国ジュネーブに置かれる国際事務局に提出します。
 国際事務局へ提出する書面には、英語による書簡(letter)を添付します。書簡に
 は、定まった書式はありません。書簡には、出願人(代理人がある場合には代理人)
 の署名を要します。

・書簡の宛先(上記テキストより):
  PCT Operations Division
	INTERNATIONAL BUREAU OF WIPO
	34, chemin des Colombettes
	1211 GENEVA 20
	SWITZERLAND
	FAX: 010-41-22338-8270

・「19条補正」を提出するときの書簡(様式【5−1(1)】)には、以下の文例
 のように、各請求項の補正の形態(unchanged, cancelled, newなど)を記載しま
 す。
	The Applicant hereby would like to amend the claims 1, 3-12, 14-22,
    24-33, 35-45, 47-51, 53-58, and cancel the claims 2, 13, 23, 34, 46,
    52, 59 and add the new claims 60-67.
    The Applicant hereby replaces the original pages 42 to 54 with the
    attached new pages 42 to 54/4.
 さらに、2010年7月1日発効のPCT規則改正により、書簡には補正の根拠をも表示
 しなくてはならなくなりました。例えば補正の形態の記載の後に記載します。従っ
 て、日本語でPCT出願をした場合であっても、補正の根拠は英語で記載すること
 になります(特許庁問い合わせによる)。

・「19条補正」(様式【5−1(2)】)は、補正後の請求の範囲の全文を記載し
 たものを、差し替え用紙として提出します。補正により用紙(例えば、p.42〜54)
 が(例えば4ページ)増加する場合には、(例えば、p.42〜54, 54/1, 54/2, 54/3,
  54/4のように)増加したページについては最終ページ番号に”/1” “/2”…を付
 したものをページ番号として用います。

・「19条補正についての説明書」(brief statement) (様式【5−1(3)】)は、
 英訳すれば英文字500語以内となるように記載します。

・「非公式コメント」は、PCT条文、規則に規定がないため、その名で呼ばれています。
 「非公式コメント」は、定まった提出期間はありませんが、優先日から30箇月経
 過後に行われる国際事務局から指定官庁への「特許性に関する国際予備報告(特許
 協力条約第一章)」の送達(後述参照)に遅れないように、優先日から28箇月ま
 でに提出することが推奨されています(上記テキストによる)。

・「非公式コメント」は、日本語で書くことができますが、国際事務局が何の書面か
 分かるように、タイトルは”Informal Comment”と記載します。また、「非公式コ
 メント」には、英文の書簡(letter)を添付します。書簡には、国際出願を特定で
 きる書誌事項を記載します。「19条補正」と一緒に、「非公式コメント」を提出
 することも可能ですが、書簡は別個に作成して添付します(上記テキストによる)。

・指定官庁が「非公式コメント」を実体審査において参酌するか否かは、指定官庁の
 判断に委ねられています。指摘官庁によっては、「非公式コメント」の翻訳が求め
 られることがあります。日本では、日本語の「非公式コメント」は、上申書と同様
 に扱われます。外国語で記載された「非公式コメント」について、日本語翻訳文を
 上申書により提出した場合には、実体審査の際に参酌されます。(以上、上記テキ
 ストによる)

・国際事務局は、国際出願、「国際調査報告」、「国際調査報告」の英訳文、「19
 条補正」、及び「19条補正についての説明書」を、各指定国の官庁(指定官庁)
 へ送達します(PCT20条(1)(a), (b), PCT規則45.1, 47.1(d))。この送達は、各指
 定官庁の請求に基づいて行われ、しかも各指定官庁が特定している時期に行われま
 す(PCT規則93の2.1)。「国際調査報告」の英訳文は、国際事務局において作成さ
 れます(PCT18条(3), PCT規則48.3(a))。

・国際事務局は、優先日から28箇月を経過した後速やかに、PCT20条の送達を請求し
 た指定官庁及びその送達の日付、並びにPCT20条の送達を請求しなかった指定官庁を
 記載した通知を、出願人へ送付します(PCT規則47.1(c))。これにより、出願人は、
 各指定国への国内移行の手続をする際に、出願書類等の写しを指定官庁へ送付すべ
 きか否かを判断することができます。この判断については、国内移行手続を代理す
 る各指定国の代理人へ確認することをお勧め致します。

・国際事務局は、出願人が国際予備審査を請求しない場合には、国際調査機関が作成
 した「国際調査見解書」と同一内容を、「特許性に関する国際予備報告(特許協力
 条約第一章)」と題して、出願人へ送付します(PCT規則44の2.1(a)〜(c))。また、
 通常の場合、優先日から30箇月を経過した後に、「非公式コメント」とともに指
 定官庁へ送達されます(PCT規則44の2.2(a), (b);「非公式コメント」については
 規定無し)。

・国際事務局では、さらに「特許性に関する国際予備報告(特許協力条約第一章)」
 の英訳文が作成され、指定官庁にこの報告が送達されるのと同時に、英訳文を必要
 とする指定官庁及び出願人に送付されます(PCT規則44の2.3(a)〜(c))。

・「特許性に関する国際予備報告」は、拘束力のない予備的な見解に過ぎず、特許性
 の最終判断は国内移行した各国特許庁に任されています。しかし、各国特許庁は国
 際予備報告を審査の参考にすることができますので、その影響力が無いとは言い切
 れません。

2.国際公開

・国際出願の内容は、優先日から18箇月経過後すみやかに、国際事務局によって公
 開されます(PCT21条(1),(2)(a))。これを国際公開といいます。国際公開では、
 「国際調査報告」、「19条補正」、「19条補正についての説明書」も、併せて
 公開されます(PCT規則48.2(a)(v),(f))。「国際調査見解書」や「非公式コメン
 ト」は公開されません。

・国際公開の準備に「国際調査報告」が間に合わなかった場合には、国際公開後に、
 あらためて「国際調査報告」が公開されます(PCT規則48.2(g))。

・国際公開の準備までに、19条補正の提出期間が満了していなかった場合には、
 「19条補正」及び「19条補正についての説明書」の提出があれば、これらは国
 際公開後にあらためて公開されます(PCT規則48.2(h))。

・日本語で国際出願がなされた場合には、国際公開は日本語でなされます(PCT規則
 48.3(a))。国際公開が、日本語などの英語以外の言語で行われる場合には、「国
 際調査報告」、「発明の名称」、「要約書」、「要約に添付する図の中の説明」に
 ついては、国際事務局において英訳文が準備され、これらの英訳文も一緒に国際公
 開されます(PCT規則48.3(c))。

・出願人は、優先日から18箇月を待たずに国際公開するよう、国際事務局へ請求
 (早期公開の請求)をすることができます(PCT21条(2)(b))。早期公開の請求は、
 国際事務局宛ですので、英文で記載します(上記特許庁テキストの様式【5−2】
 ご参照)。この様式【5−2】にありますように、国際調査報告が国際事務局に受
 領されていないときには、手数料(200スイスフラン)を納付する必要がありま
 す(PCT規則48.3(a))。

・「国際調査報告」は、出願人及び国際事務局に同日に送付されますので、出願人は、
 国際調査報告が国際事務局に受領されているか否かを、間接的に知ることが可能と
 言えます。

3.国際予備審査

・国際予備審査とは、国際出願について国際予備審査機関が、請求の範囲に記載され
 ている発明が、新規性、進歩性、産業上の利用可能性を有するかについての予備的
 見解を示す為に行う審査です。国際調査とは異なり、国際予備審査の請求があった
 場合にのみ行われます。国際調査報告が作成されていないクレーム(請求項)につ
 いては、国際予備審査の対象とはされない点に注意を要します(PCT規則66.1(e))。

・国際予備審査の請求は、国際調査報告の送付の日から3箇月、又は優先日から22
 箇月のうち、いずれか遅く満了する期間(予備審査請求期間)内にすることができ
 ます(PCT規則54の2.1(a))。

・国際予備審査の請求は、国際予備審査機関に対して行います(PCT31条(6)(a))。
 受理官庁としての日本特許庁にした国際出願の国際予備審査機関は、国際調査機関
 と同じ官庁(日本語でした国際出願については日本特許庁、英語でした国際出願に
 ついては日本特許庁又は欧州特許庁のうち出願人が国際調査機関として選択した方)
 となります。

・国際予備審査の請求書の書式については、上記特許庁テキストの様式【7−1】
 (日本語でした国際出願の場合)、及び様式【7−2】(英語でした国際出願の場
 合)をご参照下さい。国際予備審査の請求書には、国際予備審査の結果を利用する
 ことを出願人が意図するPCT締約国(「選択国」と称されます)を表示すること、
 とされていますが(PCT31条(4)(a))、改正された現PCT規則には、国際予備審査の
 請求書の提出は、指定国であってPCT第2章の規定に拘束される全締約国を選択し
 たものとみなされる旨が、規定されています(PCT規則53.7)。上記の様式
 【7−1】、【7−2】の第V欄「国の選択」には、この旨が記載されており、選
 択国について、何らかの記載を別途加える必要はありません。

・国際予備審査の請求には、予備審査手数料と取扱手数料との納付を要します。日本
 特許庁が国際予備審査機関となる場合には、双方で5万円超程度の額となります
 (上記テキストp.111ご参照)。日本特許庁が国際予備審査機関となる場合には、
 「予備審査手数料」は特許印紙により納付することができます。日本特許庁が国際
 予備審査機関となる場合に、「取扱手数料」を納付するには、国際事務局の口座に
 「円」により振込み、「振込を証明する書面」(例えば「ご利用明細」)を添付し
 て提出します。予備審査手数料も取扱手数料も、納付は国際予備審査の請求と同時
 にすることも、請求の後にすることも可能です。但し、納付は、国際予備審査請求
 書の提出から1月以内、又は優先日から22月以内のうち、何れか遅く満了する期
 間内にしなければなりません。詳細は、上記特許庁テキストp.111〜112をご覧にな
 ると良いでしょう。

・ルクセンブルク、ウガンダ、タンザニアの3カ国 (2009年12月 現在)は、2002
 年4月1日に発効した改正PCT22条に規定の国内移行期間(予備審査請求を条件
 とせずに優先日から30箇月)の適用を留保しており、優先日から19箇月以内に
 国際予備審査請求をしなければ、国内移行期間は、優先日から20箇月(ルクセン
 ブルグ)、又は21箇月(ウガンダ、タンザニア)となります。

・ルクセンブルクについては、EPOを指定官庁とした場合には、EPOの国内移行
 期間(優先日から31箇月)が適用されます。ウガンダ及びタンザニアについては、
 ARIPOを指定官庁とした場合には、ARIPOの国内移行期間(優先日から
 31箇月)が適用されます。つまり、これらの国内官庁も、EPO、ARIPOを
 経由する場合には、優先日から19箇月以内に国際予備審査請求をしなくても、
 EPO、ARIPOの国内移行期間が適用されることになります。

・国際予備審査に伴い、答弁書及び明細書等の補正(PCT34条(2)(b)に基づく補正;
 実務上「34条補正」と称されます)の提出が可能です。答弁書は、国際調査機関
 の見解書(国際予備審査機関の最初の見解書とみなされる(PCT規則66.1の2(a)))
 に対して、予備審査請求期間内に提出することができます(PCT規則43の2.1(c))。
 答弁書の書式については、上記テキストの様式【7−3】ご参照。

・34条補正は、国際予備審査の請求をした時から国際予備審査報告が作成されるま
 での間に、提出することができます(PCT規則66.1(b))。しかし、上記特許庁テキ
 スト(p.120)にありますように、国際予備審査請求期間を経過すると、早い時期
 に国際予備審査報告の作成に着手されるため、国際予備審査請求期間内に提出する
 のが良い、と言えます。34条補正の書式については、上記テキストの様式
 【7−4】ご参照。34条補正を提出するときの書簡(様式【7−4】の書簡部分)
 に記載する「補正の内容」には、補正の根拠をも記載しなくてはなりません(2010
 年7月1日発効のPCT規則改正による)。

・国際予備審査機関は、国際予備審査報告を送付する前に、書面による見解を通知す
 る場合があります(PCT規則66.2(a))。この場合、期間を指定して答弁書、補正書
 (34条補正)を提出する機会が与えられます(PCT規則66.2(c),(d); 66.3(a))。
 また、出願人の請求により、答弁書、補正書(34条補正)を提出する機会が与え
 られる場合もあります(PCT規則66.4(b))。

・国際予備審査機関は、国際調査報告の送付の日から3箇月、又は優先日から22箇
 月のうち、いずれか遅く満了する期間(国際予備審査請求期間)が満了するまでは、
 国際予備審査を開始しないことになっています(PCT規則69.1(a)但し書)。ただし、
 出願人が国際予備審査請求期間の満了を待たずに、国際予備審査を開始することを
 希望する場合には、国際予備審査の早期の開始を請求することができます(同69.1
 (a)但し書)。

・この請求は、「国際予備審査開始請求書」(上記テキストの様式【7−5】ご参照)
 を提出することによって、することができます。あるいは、「国際予備審査請求書」
 (上記テキストの様式【7−1】又は【7−2】)の第IV欄第4.「出願人が国際
 予備審査を規則54の2.1(a)に基づき適用される期間の満了よりも早く開始
 することを明示的に希望する。」に付されたチェック枠内に、チェックを入れるこ
 とによっても、することができます。(上記テキストp.114ご参照)

・国際予備審査報告は、通常において、(1)優先日から28箇月、(2)国際予備
 審査の開始の時から6箇月、のうち遅く満了する期間内に作成されます(PCT規則
 69.2)。

・作成された国際予備審査報告は、(もし有れば)付属書類とともに、国際予備審査
 機関から国際事務局と出願人とに、同日に送付されます(PCT36条(1), PCT規則
 71.1)(上記テキストの様式【6−2】ご参照。出願人には様式【6−1】も同時
 に送付。)。国際予備審査報告には、「特許性に関する国際予備報告(特許協力条
 約第2章)」と表題が付されます(PCT規則70.15(b))。

・付属書類には、19条補正及び34条補正による差し替え用紙が含まれます(PCT
 規則70.16(a), (aの2), (b))。付属書類には、19条補正及び34条補正による
 差し替え用紙に添付される「書簡」(PCT規則46.5(b), 66.8(a), (b))(上記テキ
 ストの様式【5−1(1)】、様式【7−4】の書簡部分、ご参照)は含まれませ
 ん(PCT規則70.16 (aの2))。

・国際予備審査報告は、国際事務局において英語に翻訳されます(PCT36条(2)(a),
  (b), PCT規則72.1(a))。国際事務局は、国際予備審査報告と付属書類とともに、
 国際予備審査報告の英訳文を、英訳を必要とする各選択国の官庁(選択官庁)に送
 達します(PCT36条(3)(a), PCT規則72.1(a), 72.2)。この送達は、通常の場合、
 優先日から30箇月を経過した後に行われます(PCT規則73.2(a), (b))。国際事
 務局は、この送達と同時に、国際予備審査報告の英訳文の写しを、出願人に送付し
 ます(PCT規則72.2)。

・「答弁書」、及び19条補正及び34条補正による差し替え用紙に添付される「書
 簡」は、国際事務局から指定官庁・選択官庁へ送達はなされません。指定官庁・選
 択官庁が日本国特許庁である場合を例に挙げると、「答弁書」については、出願人
 に提出は求められません。出願人が希望するのであれば、和訳文を「上申書」とし
 て提出することができます。この場合も原文の提出は不要です。「書簡」について
 は、「特許協力条約第19条補正の翻訳文提出書」(上記テキストp.423ご参照)
 の末尾の【その他】欄、あるいは「特許協力条約第34条補正の翻訳文提出書」
 (上記テキストp.425〜426ご参照)の末尾の【その他】欄に、補正の内容及び補
 正の根拠を日本語で記載することになります。「書簡」の原文の提出は不要で
 す。(特許庁問い合わせによる)


  《翻訳文について》

・以上の通り、国際調査機関、国際予備審査機関、国際事務局にて作成され、指定官
 庁・選択官庁へ送達される書類は、国際事務局にて英訳文が作成されます。これに
 対して、出願人が作成した書類であって、国際事務局から指定官庁・選択官庁へ送
 達されるもの、あるいは出願人自らが指定官庁・選択官庁へ送付すべきものについ
 ては、出願人が翻訳文を作成することとなります。その翻訳文は、当該指定国・選
 択国の言語による翻訳文となります。

4.補充国際調査

・補充国際調査は、本来の国際調査機関の他に、出願人の請求により別の国際調査機
 関を選択して国際調査報告を入手できるようにした制度です。補充国際調査機関は、
 ロシア特許庁、スウェーデン特許庁、北欧特許庁です(2009年7月現在)。従って
 日本語で国際出願をした場合には翻訳文の提出を要します。優先日から19箇月の
 期間内に請求が可能です。請求先は、国際事務局となります。2009年1月に施行さ
 れた制度で、優先日が2007年6月1日以降の国際出願が適用対象となります。(特許
 庁・平成21年度知的財産権制度説明会(実務者向け)テキスト「PCT国際出願
 制度と手続の概要」より)


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