Fukumoto International Patent Office


国際出願(PCT出願)の手続〜出願段階〜


        福本 2010年3月29日作成 2018年12月最終更新

注: 最新の料金改定については、特許庁のウェブページをご参照下さい

 
PCT出願の手続について紹介致します。初めて試みられる方にとっては、PCT出
願の手続は、結構めんどうなものではないか、と思われます。

独立開業後間もない弁理士さんのご利用を想定したものですので、代理人に関連する
事項を含めて紹介しております。皆様の特許庁への問い合わせのご負担を軽減するこ
とができれば本望です。

特許庁問合わせへの回答内容をも盛り込んでおりますが、担当官さんの1回限りの電
話回答に過ぎません。回答内容をも含めて、以下の記載内容に誤りがないことを保証
するものではない点、ご了承下さいますよう..

なお、国際出願の手続は、国際事務局や各国特許庁にも及ぶものです。手続如何によ
っては、我が国の国際的信用にかかわる場合もあります(特許庁編「産業財産権法逐
条解説(第18版)」発明協会 p.1828)ので、国際出願の手続は、弁理士さんにご
依頼なさることをお勧め致します。出願人様ご本人が手続きなさることが適当でない
と認められる場合には、特許庁は、弁理士により手続をすべきことを命ずることがで
きます。

0.一般的注意事項

・国際出願は、通常の国内出願やその後の期限のある手続とは異なり、発信主義(郵
 便局に差し出した時を提出時とする扱い)の規定がなく、原則通り到達主義(特許
 庁等に現実に到達した時を提出時とする扱い)が働くことになります。国際出願や、
 その後の関連書類は、すべて所定期限内に特許庁等に現実に届くようにしなければ
 なりません。期限に余裕を持って、早めに提出することが肝要となります。

・国際出願では、願書・明細書等の出願書類はオンラインで提出できますが、その後
 の提出書面は、すべて紙ベースで郵送等により提出するほかありません。

・国際出願及びその後の関連書類に、特許庁より交付を受けた「識別ラベル」を、押
 印に代えて使用することはできません(特許庁問い合わせによる)。代理人押印は、
 弁理士の職印でOKです(特許庁問い合わせによる)。

・出願人や代理人について、特許庁より交付された「識別番号」を記載しても、「あ
 て名」の記載は略することができません。「あて名」は、郵便番号、国名から始ま
 ってフル記載します。しかも英文を併記します。また、名称(氏名)についても、
 英文を併記します。これは日本語で国際出願した場合には、どの書面についても同
 じです。英語で国際出願した場合には、英文のみでOKです(特許庁問い合わせに
 よる)。

・国際出願では、国内出願の「住所・居所」に対応するものは、「あて名」です。国
 際出願でも「住所」という語が用いられますが、これは、どの国の住人かを示すも
 ので、「国籍」と同様に、国名のみを英文表記と併せて記載するものです
 (特許庁の教示による)。

1.明細書等の作成

・インターネット出願ソフトの新バージョンi1.70(現在はバージョンi3.40)では、
 国内出願だけでなく、国際出願(ただし日本語出願のみ)も可能です。紙ベースで
 国際出願する場合に比べて、37,000円ほど(2016年1月1日以降)手数料が割
 り引かれます。以下は、新バージョンi1.70を使って、国際出願を、日本語で日本
 国特許庁に提出する場合を想定しています。

・まず、明細書、請求の範囲、要約書、図面を、通常の国内出願と同様に準備します。
 書式は通常の国内出願とは僅かに異なります。(末尾添付の「PCT日本語出願明
 細書の書式例」(弊所作成例)ご参照)

・様々な国への移行の可能性を考慮して、他の国では不要であっても、ある国では必
 要なことはすべて反映させる、という姿勢が基本と言えます。足りない部分を、国
 内移行後に追加した場合に、追加部分について新規事項の追加に該当するものと認
 定される恐れがあるからです。

・例えば、米国への移行を考慮して、明細書には、米国特有の定型文、及び、必要な
 場合には「参照組み込み」の宣言をも、挿入しておくのが良いでしょう。また、
 「課題を解決するための手段」欄の記載が長くなる場合には、米国への移行を考慮
 して、「発明を実施するための形態」欄の末尾などに、実施の形態として記載し、
 主請求項に対応する記載のみ、「課題を解決するための手段」欄に残しておくのも、
 一つの望ましい考え方ではないか、と思われます。

・請求の範囲は、欧州を考慮して、日本出願と同様に、多数項従属形式を十分に使っ
 て、広く記載しておくのが望ましいと言えます。また、米国で不利な扱いを受けな
 いよう、欧州流の二部形式ではなく、構成要件列挙型で記載しておくのが望ましい
 と言えます。

・図面は、米国の要件を考慮して、請求の範囲の要素が全て現れるように、記載して
 おくのが望ましいと言えます。将来の補正によって盛り込まれる可能性のある要素
 も図面に現れるようにするのが良いでしょう。

・図面の形式も、米国流に合わせておくと、米国への移行後に補正する必要が無く、
 また他の国でもそのまま通用します。例えば、日本出願で【図1】の図面の中に、
 (a),(b)という符号が付されて、互いに線でつながっていない二つの図面が、
 並んでいる場合には、符号(a),(b)を図1A、図1Bに変更するのが望まし
 いものと思われます。それぞれを、【図1A】、【図1B】とする図番の付け方も
 ありますが、前者の方が、図1Aと図1Bとの位置関係が保持される、という意味
 で望ましいものと考えます。

・この場合には、例えば【図2】の図面の中に、(a),(b)という符号が無い場
 合でも、図面の形式を揃える意味で、図2、という符号を付しておくのが良いと考
 えます。全図を通して、【図○】(a),(b)という形式の 図番が無ければ、
 例えば【図1】の図面の中に、図1、と記載する必要は無くなります。

・【図1】等の図面の中に付す図1A、図1B、図1等の符号は、英語表記により、
 Fig.1A、Fig.1B, Fig.1のように記載するのが、より望ましいと考えます。
 「fig.○」は、どの国への国内移行においても翻訳の必要がない、と規定されて
 いるからです(PCT規則49.5(f))。

・ 図1の中の符号(a),(b)を、図1A、図1B(又はFig.1A、Fig.1B)と記
 載した場合には、明細書では、図1を引用するのではなく、図1A、図1Bを引用
 するようにしましょう。そうしなければ、米国に国内移行した後に、「図面への言
 及が明細書に無い」という理由で、補正命令が通知されます。補正のために、米国
 代理人費用(通常数万円)を余分に要することになります。

・図面データは、国際出願ではJPEGは推奨されていません。インターネット出願
 の際に、警告が表示されます。200dpi、300dpi、400dpiのBM
 P又はGIF(いずれもモノクロ)であればOKです。

・明細書、請求の範囲、要約書、図面を、通常の国内出願と同様に1件のワードファ
 イルに一続きの文書として準備することができたら、通常の国内出願と同様に、
 「Webページ(フィルタ後)」モードでHTMLファイルとして保存します。

・HTMLファイルについては、文章等の修正はできませんので、明細書等の内容の
 チェックは、ワードファイル上で十分に行っておく必要があります。不幸にもHT
 MLファイルとして保存した後に誤記等を発見した場合には、ワードファイルに戻
 って修正を行い、HTMLファイルとして保存し直す必要があります。

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 ・以下は、特許庁・平成21年度知的財産権制度説明会(実務者向け)テキス
  ト「PCT国際出願の手続」を参考にしています。
  最新版が、特許庁ウェブサイトの次のページ:
   https://www.jpo.go.jp/news/shinchaku/event/seminer/text/h29_jitsumusya_txt.html
  に、「特許協力条約(PCT)に基づく国際出願の手続」の名称で、アップロー
  ドされています。上記URLの中の「h29」(平成29年度の意)を、現時
  点の前年度の数字に置き換えると、いつでも最新版を入手できます。  
 ・インターネット出願ソフトの操作法については、「インターネット出願ソフ
  ト操作マニュアル 平成22年1月第01.70版」を参考にしています。
  最新版が、独立行政法人・工業所有権情報・研修館(INPIT)ウェブサイトの
  次のページ:
   http://www.pcinfo.jpo.go.jp/site/3_inet/2_manual/index.html
  に、アップロードされています。
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2.願書の作成から出願まで

・インターネット出願ソフトを立ち上げ、「国際出願」のタブを開いて、「編集」フ
 ォルダを選択し、上部の「新規作成」アイコンを選択します。なお、既に編集中途
 の願書が「編集」フォルダに保存されている場合には、この願書をクリックするこ
 とにより、編集を再開することができます。

・「新規出願参考情報」が表示されると、「出願人又は代理人の書類番号」欄に、任
 意の整理番号(12桁以内の半角英数字又は半角ハイフン「−」)を入力します。
 過去に編集の完了している願書をテンプレートとして利用したい場合には、「テン
 プレート」ボタンをクリックすることにより、作成が完了している願書を編集する
 形式で、新たな願書を作成することが可能となります。「OK」をクリックすると、
 願書の編集画面が現れます。

・テンプレートを利用するには、既に編集の完了した願書を、テンプレートとして保
 存しておく必要があります。それには、テンプレートとして利用したい、既に編集
 が完了している願書を「編集」フォルダから選択し、その編集画面上で、上部のメ
 ニューバーから、「ファイル(F)」−「テンプレートとして保存する(T)」を
 クリックして、テンプレート名を適当に入力すると、テンプレートして保存するこ
 とができます。そうすると、新たに願書を作成するために「新規出願参考情報」を
 表示したときに、その下の枠内に、既に保存されているテンプレートが表示されま
 す。

・願書の編集画面では、左側に並んだボタンをクリックすることにより、願書に記載
 すべき事項を記入してゆくことができます。

・「願書」では、発明の名称を記入します。

・「指定国」では、優先権の基礎となる出願の出願国(通常は日本)への指定を除外
 することができます。日本国出願を基礎として優先権を主張した国際出願は、日本
 国では、国内優先権を主張したものと同等に扱われます。このため、先の日本出願
 は、その出願日から1年3月後に、出願係属中であれば取り下げたものとみなされ
 ます。日本国の指定を除外することで、この不利益を回避することができます。但
 し、指定を外す訳ですから、国際出願を日本国へ移行させて、日本国で権利化を図
 ることはできません。また、出願時に指定を除外すると、その後、指定を戻すこと
 はできません。除外するか否かは、慎重でなければなりません。

・出願時に指定を除外するのではなく、出願後に「指定国の指定取下書」を提出する
 ことによって、日本国等の指定を取り下げることもできます(上記テキストの様式
 【2−26】ご参照)。先の日本出願の取り下げを回避するためには、先の日本出
 願から1年3月までに提出すべきことに注意を要します。1年3月経過後に提出す
 ると、先の出願も取り下げられ、国際出願も日本国には移行できず、両方を失
 するという最悪事態を招きますので、要注意です。特許庁への到達日が提出日と
 なる点にも注意を要します。

・先の日本出願の取り下げを回避し、しかも、国際出願を国内移行させて、先の出願
 と共に、国際出願についても日本での権利化を目指すのであれば、日本国の指定を
 除外するのではなく、国際出願後に、日本国の国内優先権の主張を取り下げる、と
 いう方法があります。これは受理官庁(日本国特許庁)に「上申書」を提出するこ
 とにより行います(上記テキストの様式【2−9】ご参照)。国内優先権の主張の
 取り下げですので、日本特許法に従い、先の出願の日から1年3月以内に提出する
 必要があります。特許庁への到達日が提出日となる点にも注意を要します。当然な
 がら、国際出願は、日本国については優先権の利益が受けられなくなる点にも、注
 意を要します。

・願書の編集画面の「氏名」では、出願人および発明者を記入することができます。
 発明者が会社(法人)の従業者で、会社が出願人となる場合には、会社は「出願人」
 として記入し、「法人」を選択し、「米国を除く全ての指定国」についての出願人
 である、とするのが通例でしょう。この場合に、発明者は「出願人」として記載し、
 「自然人」、「当出願人は、発明者でもある」を選択し、「米国のみ」出願人であ
 る、とします。米国では、発明者のみが出願人になることができるからです。上記
 テキストP.35に記載されるように、発明者を「出願人」ではなく「発明者」として
 記載すべき場合は、発明者が死亡している場合など、例外的な場合です。

・ただし、国際出願日が2012年9月16日以降となるPCT出願については、米国の改
 正特許法の施行により、もはや発明者を出願人として記載する必要はなくなりまし
 た。会社について、「全ての指定国」についての出願人であるとし、発明者につい
 ては「出願人」ではなく、「発明者」として記載することができるようになりまし
 た。このような記載をすると、かつてのバージョンi1.90では、警告が表示される
 ことになり、特許庁により、この警告は無視しても支障ない、とされていましたが、
 その後のバージョンでは、この警告が出ることもなくなっています。

・従来通りに、出願人・発明者の記載をして、出願後に名義変更届(上記テキストの
 様式【2−17】ご参照)を提出するという手立ても採り得ます。名義変更届では、
 新名義人を全員記載した上で、「事件との関係」について、変更した内容を記載す
 ることになります。例えば、会社について「全ての指定国における出願人」、発明
 者について「全ての指定国における発明者」と、記載することができます。

・個人発明家さんなど、発明者がそのまま出願人となるケースでは、発明者を「出願
 人」として記載し、「自然人」、「当出願人は、発明者でもある」を選択し、「す
 べての指定国」についての出願人である、とするのが通例でしょう。

・「出願人」の入力欄の「登録番号」は、日本特許庁から付与された「出願人識別番
 号」を入力します(特許庁問い合わせによる)。

・願書の編集画面の「氏名」では、代理人がある場合には、代理人についても記載す
 ることができます。「代理人」の入力欄の「登録番号」は、日本特許庁から付与さ
 れた「代理人識別番号」を入力します(特許庁問い合わせによる)。

・願書の編集画面の「優先権」では、優先権主張の基礎となる出願(通常は日本出願)
 についての情報を入力します。優先権主張の基礎となる出願が日本出願である通常
 の場合には、「出願書類の認証謄本を作成し国際事務局へ送付することを、受理官
 庁に対して請求する。」という項目にチェックを入れるようにします。それにより、
 優先権証明書の提出を略することが可能となります。この場合、後述の通り、出願
 後3日以内に(到達するように)「手続補足書」に「優先権証明願」を添付して、
 郵便により日本特許庁に提出します。

・近年(バージョンi1.90以降)では、上記の「出願書類の認証謄本を作成し国際事
 務局へ送付することを、受理官庁に対して請求する」という項目に加えて、その下
 に、「出願書類の認証謄本を電子図書館から取得することを、国際事務局に対して
 請求する。」という項目が設けられ、これに付属して、「アクセスコード」を入力
 する欄が設けられています。優先権主張の基礎となる出願が、国際出願ではなく、
 通常の日本出願である場合には、この項目の方にチェックを入れ、優先権主張の基
 礎となる日本出願のアクセスコードを、入力欄に入力することにより、優先権証明
 書の提出を略することが可能となります。上記の手続とは異なり、出願後に「優先
 権証明願」を日本特許庁に提出する、といった追加の手続は不要です。特許庁への
 問合せによると、現在では、こちらを利用する出願人さんの方が多い(9割)との
 ことです。

・出願時に、この手続を選択してアクセスコードを入力しておくと、優先日から16箇
 月以内に優先権書類を国際事務局に提出したこととなるため、デジタルアクセスサ
 ービス(DAS)の利用に参加していない指定国に対しても、優先権証明書の提出
 は無用となります(特許庁問合せによる)。この手続をしている場合であっても、
 指定国によっては、国際出願に慣れていない現地の代理人から、優先権証明書を提
 出するよう要求されることがあるそうですが、その場合には、国際事務局から送付
 される優先権書類受理通知(IB304)により、国際事務局が優先権書類を正しく受理
 していることを確認した上で、提出は不要であることを伝えれば足ります(特許庁
 問合せによる)。

・日本出願のアクセスコードは、この日本出願を電子出願ソフトを利用して出願した
 場合には、特許庁から送信される受領書の右端に記載されています。アクセスコー
 ドは、注意深く正確に入力するようにしましょう。特許庁問合せによりますと、ア
 クセスコードを誤って記入した場合には、出願後に国際事務局から、通常送付され
 る優先権書類受理通知(IB304)の代わりに、通知書IB345が送付されます。その右
 下に記載された担当官さんに連絡を取り、正しいアクセスコードを伝えることによ
 り、誤記入を訂正することができます(特許庁問合せによる)。

・なお、国際出願の米国国内移行をするのに、国際出願を親出願として継続出願をす
 る「バイパス継続出願」を選択する場合には、国際出願について、上記2つの何れ
 かの手続により、国際事務局への優先権書類の提出がなされていても、優先権書類
 の提出を省くためには、優先権の基礎となる日本出願のアクセスコードを米国特許
 庁に提示する必要がある点に、注意を要します。

・願書の編集画面の「内訳」では、書類を願書に添付することができます。「明・請
 ・要・図」のタブを開いて、「明・請・要・図/配列表」を選択し、「開く」をク
 リックすると、「書類内訳の詳細」が現れます。「明・請・要・図」を選択し、
 「参照」をクリックすることにより、添付すべきHTML形式で保存した明細書等
 のファイルを選択することができます。「開く」をクリックすると、ファイルの添
 付が始まります。「書類内訳の詳細」には、要約書で参照される図面の番号(日本
 出願に言う「選択図」の番号)を入力することもできますので、該当する番号を入
 力します。書類の添付が正常に完了したならば、「OK」ボタンをクリックして
 「書類内訳の詳細」の小画面を終了させます。

・願書には包括委任状の写しを添付することも可能です。同じく願書の編集画面の
 「内訳」の画面において、「添付書類」のタブを開いて、「内訳」の選択肢を開い
 て、例えば、「包括委任状の写し」を選択し、「追加」をクリックすると、「書類
 内訳の詳細」が現れます。「包括委任状の写し」を選択し、「追加のイメージファ
 イル」を選択し、「開く」をクリックすることにより、添付すべき「包括委任状の
 写し」の画像データファイル(例えばGIFファイル)を選択することができます。
 「開く」をクリックすると、ファイルが添付されます。これにより、包括委任状を
 本件出願に援用することができます。このように、国際出願では、包括委任状を援
 用するときには、包括委任状番号を記載するのではなく、包括委任状の写しを提出
 して行います。願書に包括委任状の写しを添付するのに代えて、後述のように、出
 願後に「手続補正書」により包括委任状の写しを提出することもできます。

・包括委任状そのもの(原本)の提出は、後述の通り「包括委任状提出書」に包括委
 任状を添付することにより(郵送により)行います。

・願書の編集画面の「手数料」では、手数料の計算結果を見ることができます。

・願書の編集画面の「支払い」では、手数料の支払い方法を選択することができます。
 「送付手数料」「調査手数料」については、銀行預金口座振替を利用することがで
 きます。それには、事前に特許庁へ「特許料等手数料ダイレクト方式預金口座振替
 納付申出書(新規)」を(郵送により)提出して、「振替番号登録通知」の送付を
 受けておく必要があります。この「振替番号登録通知」に記載の振替番号を入力す
 ることにより、銀行預金口座振替を利用することができます。

・国際出願手数料については、従来は「WIPO−PCT GENEVA」宛に、銀
 行振込を選択するしかなく、出願手続完了後に、銀行振込により納付する必要があ
 りました。しかし、国際出願日が平成27年4月1日以降の国際出願については、
 手数料納付の窓口が、特許庁に一本化され、国際出願手数料についても、銀行預金
 口座振替を利用することができるようになりました。同時に、「WIPO−PCT
 GENEVA」宛の銀行振込は、できなくなりました。詳細は、次の特許庁ウェブ
 ページ:https://www.jpo.go.jp/system/patent/pct/tesuryo/fee_henkou.html
 をご参照下さい。

・願書の編集が終わったならば、ファイル(F)−保存(S)により、編集内容を保
 存し、ファイル(F)−終了(X)で終了します。「変更点を保存しますか?」の
 ダイアログに「はい(Y)」をクリックし、「編集ファイルの保存が終了しました」
 のダイアログに「OK」をクリックすると、編集内容が保存されます。

・「編集」フォルダを選択し、出願すべきファイルを選択し、上部の「送信ファイル
 作成」アイコンを選択し、「電子証明書情報確認文書入力」小画面で「実行」をク
 リックし、次に現れる「提出者のテキスト署名(任意)」証画面で、支障なければ
 「OK」をクリックすると、PDFファイル形式の「送信ファイル」が作成されま
 す。

・不用意に、画面上方の「オンライン出願」ボタンをクリックしないように注意
 しましょう。意図せずして、「送信ファイル」が特許庁へ出願書類として提出され
 てしまいます(送信前に確認の小画面が現れるようにはなっています)。

・「入力チェック結果」フォルダに作成される入力チェック結果ファイルの第1ペー
 ジを印刷し、送信ファイルが正常に作成されていることを確認します。印刷したこ
 のメッセージは、事件ファイルに保存しておきます。印刷は、画面上方の「表示/
 印刷」ボタンをクリックして行います。

・「送信ファイル」フォルダに作成されている送信ファイルを選択し、全ページを印
 刷します(様式【1−1(1)D】参照)。印刷は、まず画面上方の「表示/印刷」
 ボタンをクリックして行います。次に現れる「PCT−RO表示/印刷」小画面上
 で「全選択」をクリックし、次に「表示」をクリックすると、PDFファイルが表
 示されます。PDFファイルを表示する画面上で「印刷」をクリックすると、PD
 Fファイルが印刷されます。

・印刷が終わると、PDFファイルを閉じ、その後に「PCT−RO表示/印刷」小
 画面上で、「閉じる」をクリックして、この小画面を閉じます。

・そして、印刷された送信ファイルの内容に問題がないか、チェックします。これが
 出願書類の最終チェックになります。願書、料金の表示から明細書、請求範囲、図
 面、要約書まで、さらには包括委任状の写しの添付がある場合にはこれも含めて、
 すべてに問題がないかチェックします。この書類は、チェックしたことを記録とし
 て残すために、紙ベースの事件ファイルに保存します。

・チェックの結果、問題がなければ、「送信ファイル」フォルダに作成されている送
 信ファイルを選択し、画面上方の「オンライン出願」ボタンをクリックすることに
 より、オンライン出願します。

・出願処理が終了すると、「受理済」フォルダに作成された「受理済ファイル」を選
 択し、印刷します。また、「受領書」フォルダに作成された「受領書」を選択し、
 印刷します。これらは、2部ずつ印刷し、一部は 顧客様へ送付し、一部は事件フ
 ァイルに保存します。

・受領済みファイル、受領書ともに、簡単ながらチェックを行い、最終チェックの内
 容と比較して、脱漏や改変がなく、正しい内容で特許庁へ提出されていることを確
 認します。

3.出願に付随する手続−その1−(委任状の提出)

・国際出願についての国際段階の手続では、代理人による場合であっても、指定国の
 取り下げなど一部の行為を除いて、委任状の提出は求められません。「指定国の指
 定取下書」の提出には委任状を要しますが、出願時に特定国(日本など)の指定を
 除外する場合には、委任状の提出は求められません(特許庁問い合わせによる。P
 CT規則90.4(e)、90.5(d)。)。

・しかし、出願後の手続を円滑に行うために、顧客様より委任状を交付戴き、特許庁
 (受理官庁)へ提出しておくことを原則とするのが望ましい、と考えます。

・米国については発明者が出願人であり、国際段階の手続は米国にも及ぶものですか
 ら、委任状は、会社が出願人である場合でも、会社と各発明者の全員から交付
 を戴く必要があります。この意味からも、後日の手続を円滑にするために、人事
 移動の激しい発明者を含めて、出願時に委任状を交付戴き、提出しておくことが望
 まれます。会社が出願人である場合には、会社からは包括委任状の交付を戴き、各
 発明者からは出願毎に個別委任状の交付を戴くのが、便宜かと思われます。

・ただし、国際出願日が2012年9月16日以降となるPCT出願については、米国の改
 正特許法の施行により、もはや発明者を出願人として記載する必要はなくなりまし
 た。従いまして、国際出願日が2012年9月16日以降となるPCT出願について、発
 明者を出願人として記載しない場合には、出願人会社とは別に発明者から委任状の
 交付を頂く必要は、ないものと思われます。

・委任状の提出は、国際出願後に「手続補正書」を提出することにより行います(様
 式【2−6(2)】参照)。「手続補正書」の「5 補正の内容   別紙の通り」
 の「別紙」とは「代理人の選任を証明する書面」を指しますので、添付書類である
 代理人の選任を証明する書面のみ添付すればOKです(特許庁問い合わせによる)。
 「6 添付書類の目録」の「(1) 代理人の選任を証明する書面」は、
 「(1) 委任状」と記載しても支障ありません(特許庁問い合わせによる)。
 「代理人の選任を証明する書面 2通」と記載されていますが、これは記載例とし
 て、2通(出願人毎に委任状を1枚ずつ提出する場合等)としたもので、「2通」
 でなければならない、という趣旨ではありません(特許庁問い合わせによる)。

・国際出願時に記載(選任)されていなかった新規の代理人を選任した場合や、代理
 人に変更があった場合には、「代理人選任届」を提出する必要があり、これには委
 任状の提出を要します(様式【2−20】参照)。通常の国内出願とは異なり、
 「代理人受任届」ではなく「代理人選任届」の提出が求められる点、注意を要しま
 す。

・「代理人選任届」に添付する「代理人選任証」は、委任状そのものであり、「委任
 状」と記載しても支障ありません(特許庁問い合わせによる)。「代理人選任届」
 の「5 添付書類の目録」にも「代理人の選任を証明する書面」と記載する代わり
 に、「委任状」と記載してもOKです(特許庁問い合わせによる)。

・個別委任状に代えて、包括委任状を提出する場合には、既述の通り、願書に包括委
 任状の写しを添付して国際出願をすることができます。包括委任状の写しを、個別
 委任状と同様に「手続補正書」に添付して提出することも可能です(特許庁問い合
 わせによる)。

・包括委任状そのもの(原本)の提出は、「包括委任状提出書」に包括委任状(原本)
 を添付することにより(郵送により)行います(様式【2−24】ご参照)。委任
 状は、様式【2−24】のように「代理人選任証」と記載する代わりに、「包括委
 任状」と記載しても支障ありません(特許庁問い合わせによる)。包括委任状提出
 書の「4 添付書類の目録」にも、様式【2−24】のように「(1)代理人の選
 任を証する書面  1通」と記載する代わりに、「(1)包括委任状  1通」と
 記載しても支障ありません(特許庁問い合わせによる)。

・受理官庁(特許庁)に委任状を提出しておれば、国際事務局への手続の際に、あら
 ためて委任状を提出する必要はありません。また、受理官庁(特許庁)に日本語で
 委任状を提出していて、その英訳文の提出がなくても、国際事務局への手続上の問
 題はありません。国際出願では、願書に用いた言語に統一する必要があり、このた
 め、英語で出願した場合で、委任状を日本語で提出する場合には、英訳が必要とな
 ります。(以上、特許庁問い合わせによる。国願法施行規則3条。)

4.出願に付随する手続−その2−(優先権証明書の提出)

・国際出願について提出すべき優先権証明書は、優先日(優先権主張の対象とされる
 先の出願の日)から16月(1年4月)以内に、出願人(又は代理人)が、受理官
 庁に提出することになっています。受理官庁の代わりに、ジュネーブの国際事務局
 (WIPO)へ提出することも可能です。(PCT規則17.1(a))

・先の出願(例えば日本出願)が受理官庁(例えば日本特許庁)に提出されている場
 合には、出願人(又は代理人)が、直接に提出する代わりに、優先権書類を国際事
 務局に送付するよう、受理官庁に請求することができます(PCT規則17.1(b))。こ
 の手続を利用するのが通例です。これを利用するには既述の通り、国際出願の願書
 を作成する際に、「出願書類の認証謄本を作成し国際事務局へ送付することを、受
 理官庁に対して請求する」という項目にチェックを入れておくことが可能で、これ
 を標準にするのが望ましいと考えます。この場合には、国際出願の後3日以内に
 (到達するように)「手続補足書」に「優先権証明願」を添付して、郵便により日
 本特許庁に提出します。「優先権証明願」には、特許印紙1,400円を貼付しま
 す。(様式【2−30】【2−11(1)】参照)

・「優先権証明願」については、先の日本出願の代理をしていない代理人が提出する
 場合には、委任状の添付が必要です。委任状には、委任事項として、例えば「特願
 2007−123456についての優先権証明請求に関する一切の件」のように記
 載します(上記特許庁テキストによる)。

・これで、優先権証明書の提出手続は完了します。日本特許庁は、優先権証明書(認
 証謄本)を作成して、国際事務局に送付します。各指定国は、国際事務局を通じて
 優先権証明書を取得することになります。

・国際出願の願書を作成する際に、「出願書類の認証謄本を作成し国際事務局へ送付
 することを、受理官庁に対して請求する」という項目にチェックを入れることなく、
 出願後に、優先日から16月以内に同様の手続をすることもできます。このときに
 は、「優先権書類送付請求書」に「優先権証明願」を添付して日本特許庁に提出し
 ます(様式【2−11】【2−11(1)】参照)。

・出願時に全ての手続を完了させておくのが、無用な期限管理を発生させず、手続の
 ミスを防ぐ意味でも望ましいと言えます。このため、国際出願の願書を作成する際
 に、「出願書類の認証謄本を・・・請求する」という項目にチェックを入れておき、
 出願後3日以内に届くように「手続補足書」に「優先権証明願」を添付して特許庁
 に提出するという、既述のやり方を標準にするのが良い、と考えます。

・特許庁に優先権証明書を作成してもらうのではなく、自身で提出することも可能で
 す。基礎出願が外国出願であって、それを受理官庁としての日本特許庁に提出する
 場合には、そうする他ありません。基礎出願が日本出願である場合でも、(受理官
 庁としてのではなく)日本特許庁に「優先権証明請求書」を提出して、優先権証明
 書を入手しておれば、これを提出することも可能です。

・「優先権証明請求書」についても、「優先権証明願」と同様に、先の日本出願の代
 理をしていない代理人が提出する場合には、委任状の添付が必要です。委任状の記
 載例は、「優先権証明願」の場合と同じです(上記特許庁テキストによる)。

・優先権証明書を提出するには、オンラインで国際出願をする場合には国際出願と同
 時に提出することは不可であり、国際出願後に(優先日から16月以内に)提出す
 るほかありません。優先権証明書を提出するには、「優先権書類提出書」に優先権
 証明書を添付して、受理官庁としての日本特許庁に提出します(様式【2−10】
 参照)。

・「優先権書類送付請求書」と「優先権書類提出書」については、国際出願を代理し
 ていない代理人が提出する場合には、「代理人選任届」を要します。「代理人選任
 届」には委任状を添付します。

・上記「2.願書の作成から出願まで」の「優先権」に関する項に記したように、近
 年では、優先権主張の基礎となる出願が、国際出願ではなく、通常の日本出願であ
 る場合には、出願時の画面上で、「出願書類の認証謄本を作成し国際事務局へ送付
 することを、受理官庁に対して請求する」代わりに、「出願書類の認証謄本を電子
 図書館から取得することを、国際事務局に対して請求する」ことができ、優先権主
 張の基礎となる日本出願のアクセスコードを、入力欄に入力することができます。
 この手続をした場合には、上記の手続とは異なり、出願後に「優先権証明願」を日
 本特許庁に提出する、といった追加の手続は不要です。特許庁問合せによると、代
 理人が、先の日本出願の代理をしていない場合であっても、「優先権証明願」の提
 出手続とは異なり、この手続のために委任状の提出は求められません。

・国際出願時にも、優先日から16月以内にも、優先権証明書の提出手続をしなかっ
 た場合であっても、各指定国は、出願人に一定の期間を与えて、優先権証明書を提
 出する機会を与えなければならないことになっています(PCT規則17.1(c))。日本
 特許庁が指定官庁となる場合には、国内移行の手続をすべき期間(国内書面提出期
 間)である優先日から30月(2年6月)の期間の満了日後2箇月以内に、優先権
 証明書を日本特許庁に提出することができます(日本特許法施行規則38の14
 (1))。どのような猶予期間を与えるかは、国によって異なるものと思われますの
 で、指定国毎に優先権証明書を提出するのであれば、各指定国の代理人に、国内移
 行手続の前に尋ねておく必要があります。

《付録》PCT日本語出願明細書の書式例(弊所作成例)

【書類名】   明細書
【発明の名称】 ・・・・・
【技術分野】
 【0001】
 本発明は、〜に関し、特に、〜する技術に関する。
【背景技術】
 【0002】
 従来、この種の〜として、〜ものが知られている(特許文献1)。
    ・・・・・・
【先行技術文献】
 【特許文献】
 【0003】
  【特許文献1】 特開2000−000000号公報
  【特許文献2】 特開1999−000000号公報
 【非特許文献】
 【0004】
  【非特許文献1】 ●●著 「●●」●●出版 2000年
【発明の概要】
 【発明が解決しようとする課題】
 【0005】
 本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、〜を提供することを目的とする。
 【課題を解決するための手段】
 【0006】
 上記課題を解決し上記目的を達成するために、本発明のうち第1の態様によるもの
は〜であって、・・・・・。
 【0007】
 この構成によれば、・・・・・。
 【0008】
 本発明のうち第2の態様によるものは、第1の態様による〜であって、・・・・・。
 【0009】
 この構成によれば、・・・。
 【0010】
 本発明のうち第3の態様によるものは、第1又は第2の態様による〜であって、・
・・・・。
 【0011】
 この構成によれば、・・・・・。
 【発明の効果】
 【0012】
 以上のように本発明によれば、・・・・・。
 本発明の目的、特徴、局面、及び利点は、以下の詳細な説明と添付図面とによって、
より明白となる。
【図面の簡単な説明】
 【0013】
 【図1】 図1は、・・・ 
 【図2】 図2A及び図2Bは、・・・
 【図3】 図3A〜図3Dは、・・・
【発明を実施するための形態】
 【0014】
 (実施の形態1)
 図1は、本発明の実施の形態1による○○装置の構成を示す△△図である。この○
○装置101は、台座1、本体3、及び蓋5を有している。台座1は・・・。本体3
は・・・。蓋5は・・・。
     ・・・・・
 図2A及び図2Bは、・・・であり、図2Aは、・・・、図2Bは、・・・。
     ・・・・・

 【0030】
 本出願は、200X年YY月ZZ日に日本国に本出願人により出願された特願20
0X−AAAAAAA号に基づくものであり、その全内容は参照により本出願に組み
込まれる。
 【0031】
 本発明の特定の実施の形態についての上記説明は、例示を目的として提示したもの
である。それらは、網羅的であったり、記載した形態そのままに本発明を制限したり
することを意図したものではない。数多くの変形や変更が、上記の記載内容に照らし
て可能であることは当業者に自明である。
【産業上の利用可能性】
 【0032】
 本発明の(発明の名称)は(発明の効果)できるので、産業上有用である。
【符号の説明】
 【0033】
 1 台座、 3 本体、 5 蓋、・・・、 101 ○○装置。 

【書類名】  請求の範囲
  【請求項1】
     ・・・・・
  【請求項2】
     ・・・・・
  【請求項3】
     ・・・・・
【書類名】  要約書
     ・・・・・
【書類名】  図面
【図1】
   <ファイルにリンクすることにより図面の貼り付け>
【図2】
   <ファイルにリンクすることにより図面の貼り付け>
【図3】
   <ファイルにリンクすることにより図面の貼り付け>


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