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本日の為替相場は1ドル=0.9531両?



               福本 2000年作成 2009年12月更新

 70年代中頃に円のデノミネーションについて政府首脳から提案がなされて、三十
数年を経ています。円の単位を二桁ほど桁下げしようというもので、500円のお弁
当が5円となり、120円のJRの一区間切符が1円20銭になる、というあんばい
で、見かけ上少ない金額での生活が出現することになります。どのような意図があっ
て、デノミを行おうとしていたのかは、よくわかりません。デノミに便乗した端数切
り上げという値上げを招く恐れがあるとして、慎重論も一方にありました。結果、沙
汰止みとなり、その後も幾度か浮上しては消え、現在に至っているようです。

 推測ですが、デノミ議論が現れた背景には、日本が経済先進国の仲間入りを果た
し、サミットの開設とともにその一員にも加わる中で、ドルとの交換レートが2桁数
値であるのは体面上好ましくない、との思慮が政府首脳の中にあったのではないでし
ょうか? 当時のサミット七ヶ国の中で、ドルとの交換レートが2桁以上の数値で、
ドルより2桁ないしそれ以上も安い通貨という印象を与えているのは、イタリアと日
本だけです。1ドルが約100円というアンバランスな現在のレートは、戦前以来の
高い物価上昇を現在に伝える痕跡であるとも云えます。世界の先進国と肩を並べる時
代を迎える中で、いわば過去の恥を世界にさらすようなレートを改善したいというの
が、デノミ議論の発端だったのではないでしょうか? あくまで想像です..

 体面だけをよくしても、余り実のあることではありませんが、もしも便乗値上げ等
の副作用を生み出すことなく体裁を整えたいのであれば、方法が無いわけではないと
考えます。現在の円を切り上げも切り下げもせずに、そのまま存続させた上で、円と
固定レートの別の通貨単位を導入して互いに併存させれば、問題は解消されます。そ
れには、商取引上100円を例えば1両と称することに合法性を付与する法案を、国
会に通過させるだけで足ります。

 これまでの一万円は、そのまま一万円と称しても良いし、百両と称しても良いこと
になります。銀行預金額を書き換える必要もなく、新たな貨幣を急いで発行する必要
もなくなります。デパートの価格表を改める必要もありません。体面をよくしたいと
いう政府首脳の意志(もしそうだったとしたら)を、経済上の混乱を引き起こすこと
なく達成することができます。古くなった家屋の外装だけをリフォームするのに似て
います。

 為替レートを、1ドル=95円31銭と表現する代わりに、1ドル=0.9531
両と表現することができます。また、1両=1.0492ドルと、自国の通貨を基準
に為替レートを表現することも可能となります。円が高くなるとドル単位の数値が高
くなり、円が安くなると数値が低くなりますので、円の価値の高低がより分かり易く
なるという利点も生まれます。

 恐れながらお上へ言上たてまつるのも面白いかもしれません。2001年には、律
令制導入以来1300年の伝統を持つ「大蔵省」という呼称が姿を消し、真新しい
「財務省」の名が導入されました。内装に余り手を加えることなく、看板を塗り換え
ることが流行の昨今には、時宜を得た提案かもしれません。


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