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空間の量子化のはなし


                福本 2000年作成 2016年9月更新

 空間が不連続であるとする説があるのだそうです。日常の生活経験としては物体が空間
の中を連続に運動しているように見えても、細かく見れば実は不連続な空間を段階的に移
動しているのである、とする説のようです。どのような理論的、実験的根拠があるのか、
単なる空想なのかはわかりません。

 空間の時間的変化である空間の運動というものが、仮にあったとして、その運動法則を
記述する運動方程式を、古典論の立場であれ構築することができれば、これをラグランジ
ュ形式で記述し、正準変数の間に交換関係(または反交換関係)を設定することにより、
量子論へ移行できるはずです。空間の量子化を議論する前に、空間の運動方程式を議論す
るのが先決ではないか、と思われます。

 量子力学は、明快に作り上げられています。古典的な力学変数を線形演算子に対応させ、
力学的状態を状態ベクトルに対応させ、さらに、粒子系の運動方程式を出発点とするとき
には正準変数の間に交換関係を設定し、且つ状態ベクトルを対称化又は反対称化すること
で量子論へ移行し(第1量子化)、波動場の運動方程式を出発点とするときには交換関係
または反交換関係を設定することで、量子論へ移行します(第2量子化)。このように、
量子論は古典論を足場として組み立てられています。

 電子を粒子と見る見方も、波動と見る見方も、いずれも一方的な見方であって古典的な
見方に過ぎません。電子を波動と見る見方が量子論なのではなく、双方を統一するのが量
子論であるはずです。電子の運動を量子論で統一的に取り扱うのに、ニュートンの方程式
を出発点とする第1量子化と、前期量子論の波動場の運動方程式を出発点とする第2量子
化との、二通りの道筋があるということです。

 電磁場についても同様のはずです。電磁場については、古典論ではもっぱら波動場の方
程式(マクスウェルの方程式)しか確立されておらず、第2量子化を通じて量子論が構築
されています。しかし、電磁場をフォトンの流れと見る古典的な運動方程式が存在しても
おかしくはなく、隠された運動方程式を探し出すのも、面白いテーマかもしれません。

 「空間が不連続である」と主張する立場は、空間を連続とする場の古典論の立場に対抗
する、粒子の古典論の立場に過ぎないのではないでしょうか。何らかの古典的運動方程式
が存在するのであれば、これを足場として量子論へ移行することによって、空間は連続で
もあり不連続でもあるという、禅問答のような奥深い境地へ到達することができるのであ
ろう、と考えます。


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