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群馬県谷川岳下流の鉄砲水はなぜ起こった? |
福本 2000年作成 先日起こった標記の鉄砲水の原因として、上流で集中豪雨があったためとの説明がなさ れています。集中豪雨があっても、水量の増加には、豪雨がある程度続くほどの時間を要 するはずなのに、被災者の証言のように「あっという間に川が深くなった」のはなぜでしょ うか? 上流で水を堰き止めていた何かが、水の勢いで破壊されて、突如大量の雨水が流 れ出たからであろう、との説明もなされていました。 鉄砲水という現象は度々観測されているように思います。その度に、本当に上流の堰が 破壊されていたのでしょうか..。「上流の堰の破壊」という見えない原因を仮定しなく とも、鉄砲水が発生するメカニズムについて、次のような説明が可能なのでは、と考えて おります。 流体力学では、管を流れる流体について、管の表面では流速が遅く、表面から遠ざかる ほど流速が増すことが知られています。穏やかな「整流」という状態であれ、激しい「乱 流」という状態であれ、流速が距離に依存して変化する点に変わりはありません。これは、 管の表面では摩擦が作用するため、流速が制限されるという当たり前の事実に由来する現 象と云えます。 したがって、川を流れる雨水も、水かさが低い間は遅く流れ、水かさが増すにしたがっ て速く流れることになります。増水したときの川の流れが、平常時に比べて急であること は、日頃目にする光景であろうと思われます。 上流で集中豪雨があって、上流で水かさが増してゆくと、下流では、後からやってくる 水かさの多い流れほど速く進み、先に流れている水かさの少ない流れに近づくこととなり ます。その結果、川の流れに沿った水かさのプロフィールは、下流へ下るほど急峻となり、 下流では増水が短時間で起こることとなります。これが鉄砲水の正体ではないかと考えま す。 下流へ下るほど、川幅が順調に広くなっている通常の河川では、水かさの増加が川幅の 拡がりによって、ある程度吸収されることにより、鉄砲水は緩和ないし解消されることも あるでしょうが、細い谷川が延々とつづいている渓谷では、上流の天候次第で鉄砲水は、 いつ起こっても不思議では無い、と言えそうです。 渓谷を旅されるときには、くれぐれもご用心のほど。