Fukumoto International Patent Office


中国模倣品対策のおはなし



                 福本 2010年1月18日作成 2010年8月更新

2008年秋〜2009年春に、近畿経済産業局による中国模倣品被害対策をテーマとした事
業(実習)に参加させて戴き、複数企業の訪問を通じて中国模倣品被害の実態を目の
当たりにし、処方を提示するという機会に恵まれました。また、2009年2月、2010年
3月には、弁理士会近畿支部から代表の一人として中国(杭州、広州)を訪問する機
会を得ました。さらに、中国ビジネスに関与する業者さんから相談を受けることもあ
ります。以下は、これらの経験に基づき、JETRO(日本貿易振興機構)のテキストを
も参照しつつまとめたものです。

1.模倣品被害の実態

海外の模倣品製造国別の日本企業の被害社数比率は、中国65.5%、台湾22.5
%、韓国22.4%となっています(JETROパンフレット「中小企業のためのニセモノ
対策」2008年より)。中国製模倣品の7割以上が外国へ輸出されています(同パンフ
レット)。

中国製模倣品の手口は、商品の見た目の形態を似せて、ニセモノを掴ませるものが少
なくなく、悪質であると言えます。商標、パッケージまでも似せたものが少なくあり
ません。見かけは似せていても、模倣品製造業者の技術力が低いため、性能は劣って
いることが多いようです。

中国では従業員の転職率が高いという現状があります。ノウハウがリークし易く、中
国での生産にはリスクが伴うことも念頭に置く必要があります。

(国内の中小企業の被害例)
(1) 商標を含めて外観、表示がそっくり真似られている(商標権侵害)。
(2) 梱包用の箱は、使用済みのものを再利用して似せている(不正競争行為)。
(3) 製品の「証明書」のねつ造もある(不正競争行為)。
(4) 特許権の侵害やノウハウの不正使用は無かったが、性能は遥かに劣っていた。
(5) 中国の有名ウエブサイトで模倣品が販売されており、真正品の会社のカタログが
  そのまま転用されている(著作権侵害の可能性あり)。

2.模倣品の影響

模倣品は安く売られるため、真正品の市場が浸食されることになります。市場に模倣
品が現れた当初は、売り上げにさほどの影響は無くても、市場の侵食が進むのに伴っ
て売り上げが減少してゆくことになります。また、真正品と誤って模倣品を購入した
顧客、あるいは、真正品ではなく模倣品を部品として使用した製品を購入した需用者
から苦情を受けることにもなります。顧客の信用を失い、ブランドが損なわれること
となります。

劣悪な性能のために事故が発生した場合は、PL法に基づいて消費者から提訴される
危険性もあります。模倣品やそれを部品とする製品が、例えば米国に輸出され、訴訟
費用の高いことで知られる米国裁判所へ、米国消費者から提訴されれば、真正品では
なく模倣品であって責任がないことを立証するだけでも、費用と労力が膨大なものと
なります。身に覚えのない火の粉を払うのに、莫大なお金とエネルギーとを要するこ
ととなります。

3.対策

模倣品被害は、放置すると拡大すると言われています。芽のうちに摘み取ることが大
切であると言えます。叩いても繰り返し出てくることも少なくなく、「モグラ叩き」
に喩えられています。「モグラ叩き」を止めると、「モグラ」が「怪物」になって行
く危険性があるわけですから、あきらめずに何度も対策を講じることが大切であると
言えます。

<まず権利の取得を>

権利がなければ、権利に基づく対策を講じることはできません。まず、特許、実用新
案、意匠、商標という権利を中国でも取得しておくことが大切だと言えます。著作権
については、著作権登録制度もあります(創作者、創作時の立証が容易となる)。営
業秘密は、秘密として厳重に管理することにより、漏洩を防止するとともに、漏れた
場合に反不正競争法による保護を受けることも可能となります。契約を結べばそれだ
けで安心、と言うことはできないとしても、例えば従業員と秘密保持義務契約を結ぶ
ことも必要なことと言えます。

販売実績等を示す資料(新聞への広告など)を保存しておくことも大切です。商品の
名称、包装等について、著名性の立証に役立ちます。著名であれば、商標登録がなく
ても、反不正競争法により模倣品を抑えることが可能となります。(JETROのテキスト
より)

<事後の対策>

模倣品が発生した後の対策として、(1)行政ルートによる摘発、(2)司法ルート
による提訴、(3)刑事訴追、(4)税関による差し止め、が挙げられます。直接に
は日本国内の代理人に依頼する場合であっても、現地の代理人を通じて手続を行う必
要があります。

(1)行政ルートは、地方行政庁に対して摘発を依頼するものです。日本には無い制
度です。特許権・実用新案権・意匠権に基づく摘発は、地方知識産権局に依頼します。
商標権に基づく摘発、又は反不正競争法に基づく摘発は、地方工商行政管理局に依頼
します。著作権に基づく摘発は、地方版権局に依頼します。

行政ルートは、安いコストで早く対応できるメリットがあります。模倣行為を止めさ
せることはできますが、損害賠償を求めることはできません。通常は、止めさせるこ
とが最重要であるため、よく利用されます。

(国内の中小企業の例)
調査及び行政摘発に60万円を要している。押収品は、真正品の末端価格で30万円
相当。

(2)司法ルートは、人民法院(裁判所)に提訴して、裁判により解決を図るもので
す。裁判は二審性が採られています。行政ルートに比べ、時間とコストを要する手立
てである、と言えます。ただし、損害賠償を求めることも可能です。

(3)刑事訴追は、刑事事件としての処罰を求めるものです。

(4)税関による差止めは、あらかじめ、税関総署(北京)に特許権、実用新案権、
意匠権、商標権、著作権の登録をしておくことにより、全国の税関により、中国から
の輸出の差し止めを可能にするものです。登録には、模倣品のサンプル又は写真の提
出も必要です。模倣品業者のリスト(ブラックリスト)や、真正品を扱う業者のリス
ト(ホワイトリスト)を提出することも可能です。税関が模倣品を見つけると、代理
人に通知があります。権利者が担保金を支払うと、税関による侵害認定が行われ、侵
害品であれば処分されます。(JETROテキストより)

<侵害者の調査>

摘発に先立って、侵害者の調査が必要となります。危険であるため、事情に通じた現
地の調査員に依頼して調査することになります。調査の費用については、JETRO(日
本貿易振興機構)により300万円を上限として、2/3の助成を受けることができ
ます。摘発に至ることなく、調査後に警告を行うだけで解決する場合もあります。模
倣業者に逃げられないようにレイド(急襲)をかける場合には、警告なしで行うこと
になります(弁護士法人フラーレン・谷口由記(よしのり)弁護士・弁理士より)。

<模倣品対策の対費用効果は将来効を含めて>

模倣被害は放っておくと次第に拡大するものです。摘発等の対策による対費用効果は、
押収品の金額だけでなく、将来効を見る必要があるものと考えます。中小企業さんに
は決して軽くない負担とは言えますが、対策を取ったために、将来の大きな損失を防
ぐことができた、という見方が必要ではないか、と考えます。

<ブランド管理費として毎年費用計上>

あたかも中国が国を挙げて模倣に走っているかのようにも見える現状を考えれば、模
倣品対策に要する費用は、突然舞い込んだ災難による予定外の出費、という捉え方で
はなく、中国に関わるビジネスを遂行する上では、避けることのできない予定すべき
経費である、との認識が必要ではないか、と考えます。ブランドを維持するための費
用として、現在の中国では相応の出費を強いられる、という認識の下に、中国が健全
な経済国に成長するまでは、あらかじめ一定額を年度ごとに予算の中に組み込む、と
いう決断が必要か、と考えます。そうすることにより、事態が発生したときに、意思
決定に時日を要することなく、迅速な対応が可能となるものと考えます。何事もなけ
れば、予算は翌年にそのまま繰り越せば良いのです。

<他業者との協力(ライバルも模倣品対策では呉越同舟で)>

共同で動けば、工商行政管理局も動き易くなります。特に、現地法人を持たない会社
であれば、現地法人を保有する会社と協力することができれば、この会社を介して、
工商行政管理局等とも関係を深めることができます。当局もいわば成果を争っており、
額の大きい方から先に、という傾向があるため、共同行動はこの意味でも大きな成果
を生むことが期待されます。(特許業務法人グローバル知財・小倉啓七弁理士より)

<原産地表示の併用>
模倣品予防のための措置として、登録商標と共に “MADE IN JAPAN”の原産地表示を、
真正製品あるいはその包装等に付するという手だてがあります。表示をそっくり模倣
された場合に、商標権侵害だけでなく、原産地の不当表示として、製品品質法、反不
正競争法違反を問うことが可能となります。模倣者に対して、心理的抑止力ともなり
得る有効な手段と言えます。(有古特許事務所・中尾優弁理士より)

<顧客さんへの広報活動>

模倣品の実態について、顧客に情報を提供して注意を呼びかけることは、大切な顧客
を被害から守ろうとする、会社の姿勢をアピールする機会ともなり得るものと考えま
す。逆に、実態を把握しながら、何ら情報の提供をしないのであれば、後日に問題が
生じたときに、叱責を受けることにもなり兼ねないのではないか、と考えます。模倣
業者に対して対策を取るのであれば、そのことも顧客に伝えることにより、顧客の信
頼を高め、貴社のブランドイメージをさらに高めることにもつながるのでは、と考え
ます。

4.注意点

模倣品対策には身の危険を伴います。業者への摘発の場面に参加するのは危険です。
摘発後にも、復讐行為があり得るので、注意を要します。摘発に成功したら、行政機
関への感謝状の贈呈など、関係者に謝意を伝えることも大切です。(弁護士法人フラ
ーレン・谷口由記(よしのり)弁護士・弁理士より)

模倣品の摘発後に、行政当局によって押収品がきちんと廃棄されるとは限りません。
権利者側がお金を払って廃棄処分させる、ということも行われています(JETROのテ
キストより)。

行政機関を含めて地元びいきが根強く、円滑な摘発が妨げられるケースが少なくあり
ません。地方へ行くほど、その傾向が強いと言われます。模倣業者は地元の経済、税
収に貢献しているという一面があります。また、地方では人の移動が少なく、模倣業
者も行政官も幼なじみ、という間柄。日本とは異なり、裁判官も地方から給与が出て
いるという現状もあります。これらが地方びいきの温床となっていると言われていま
す。

しかし困難ながらも成功例もあり、ねばり強い対策が望まれます。特に、人のつなが
りが緩やかな都会部では、比較的公正な対応が期待できる、とも言われています。
一中国弁理士の見解として、日本の会社が中国で訴えを提起するなら、北京、上海、
広州、深センの4都市、もう一つ加えるなら大連、の何れかを裁判地とするのがよい、
とのアドバイスを聴いております。

2010年の広州訪問の際には、高級人民法院(高等裁判所)を訪問し、知財に携わる7
名の裁判官と面談する機会を頂きました。裁判官は、米国スタンフォード大学留学、
日本留学経験者、工学博士など、一般に高学歴で、日本の裁判制度についても理解を
お持ちでした。日本企業や合弁企業が当事者となる裁判事件は多い、とのことです。

広東省内の中級人民法院のうち、8箇所は専利(特許・実用新案・意匠)の案件の扱
いが可能で、基礎人民法院のうち、21箇所は、専利を除く知的財産(商、著、不競)
の案件の扱いが可能とのことでした。広東省は知財の案件が多く、中級人民法院だけ
では処理しきれないため、一定の基礎人民法院で知財の扱いを可能にしているとのこ
とです。広東省では、日本企業が関与するような渉外案件であって、訴額が2億元以
上である場合には、高級人民法院が一審となり、二審は最高人民法院(北京に置かれ
る最高裁判所)となるとのことです。

広州では、特許、意匠、商標それぞれについて、摘発に成功した経験を持つ法律特許
事務所(中国の弁理士の多くは弁護士資格をも有する)を訪問する機会にも恵まれま
した。


広州高級人民法院の写真です


5.中小企業を巡る問題点と解決のための提案

模倣品対策に関する中小企業の主な課題としては、以下が挙げられます(近畿経済産
業局による)。
(1) 業界の中堅規模の企業においても事前対策や権利関係の整理が不十分
(2) 全社的な対応が不十分(法務、知財、開発、営業等の各担当間の連携不足)
(3) 効果的な出願、現地代理人や委託先との契約、模倣品被害の把握・整理が不十分
(4) 業界における横の連携(同業者の連携)も不十分(国内での情報交換程度)
(5) 対策費が確保できない(経営トップが目に見えないコスト負担に後ろ向き)

これらの問題について、以下のように考えます

上記(1)〜(3)については、模倣品対策に通じる弁護士(法務全般)、弁理士
(知財関連)、会計士(財務関連)と顧問契約を結ばれて、会社の担当者さんが常時
連絡をとりつつ、会社の組織、制度の改善を進めるのが最も効果的だろうと思われま
す。

顧問契約を結ぶほどの余裕のない会社さんや、最初の糸口を掴みたい会社さんのため
に、例えば近畿経済産業局さんの主催で、定期的に有料ないし無料相談会を開いて、
そこに弁護士・弁理士・会計士の先生方にご参加頂くという企画も望ましいものと考
えます。ただし、よく宣伝が行き届かないと、企画倒れになる恐れがあります。

例えば、弁理士会近畿支部の無料相談室(平日毎日開室;予約制)の相談員一覧に、
模倣品対策の相談可能な弁理士については、その旨の表示をするだけでも、必要とす
る会社さんには大助かりとなるかもしれません。近畿支部の無料相談室の広告に「模
倣品問題も相談可能」と書いて頂いて、相談の内容が模倣品問題であれば、対応可能
な弁理士に振り分ける、という手数を支部事務員の方に執って頂くことができるなら
ば、それほど大きな費用、作業を要せずして、会社さんのニーズに応えることが可能
になるのではないか、と思われます。

上記(4)については、連携作りの核となる者、オルガナイザーが必要になるものと
思われます。中国の産品の2割が模倣品(2008年4月のウェブ・ニュース)という状
況が、もしも正しければ、国内企業が個別に対処したのでは、とても間に合わないの
では、と思われます。様々な業界に最も顔の利く経済産業局さんで、予算を組んで人
材を確保して頂く、というのが最も効果的ではないか、と思われます。

みんなで当たれば安くなる、楽になる、再発防止の効果も上がる、という宣伝文句で、
意識改革を進める必要があるものと考えます。競合会社同士をまとめるのは楽ではな
いと思われますが、競合会社同士であっても、例えば商工会議所には加入されている、
という現状があります。例えば商工会議所さんの協力を得て、参加会社間の連携づく
りを進める、というのも一つの手か、と思われます。

上記(5)については、会社さんの意識改革が必要か、と思われます。模倣品対策は
ブランド維持に必要な経費、との認識を新たにした上で、その保障として、毎年ある
額を予算に組込む必要性を、広く宣伝する必要があるものと思われます。

経済面から見れば、模倣品は中国の国内需要を満たし、中国の人々の生活を豊かにし
ている、という一面があります。また、模倣品が海外に輸出されることにより、中国
に外貨収入がもたらされます。経済面のみを見れば、模倣品は国内に損失よりも利得
を多くもたらしている、というのが現状であろうと思われます。このことが、法制度
の整備の進展にも拘わらず、その実効性が遅れる最大の原因かと思われます。しかし、
多くの経済先進国のように、中国国内にも、模倣品によってむしろ損害を被るという
健全な経済活動を営む企業が大きな勢力を形成するようになれば、経済そのものの働
きによって、模倣品業者は居場所を失って行くことになるだろうと思われます。近い
将来に、そのような時期が到来することだろうと思います。

そのときまで、いわば発展途上の過渡期の対策として、ブランド維持費に模倣品対策
費を毎年の予算として計上しておく、という対応が求められるのでは、と考えます。

より効果的な解決のために

そもそも、模倣品対策が大した費用を掛けずにできるようになれば、なお望ましいと
言えます。模倣品を発見しながらも、手をこまねいて対策に二の足を踏んでおられる
中小企業さんがおいでになる背景には、何と言ってもコストが掛かる、お金が要る、
ということがあるのだろうと思われます。

例えば、JETROさんで調査費用を90%負担、摘発費用も90%負担が、もしも実現
すれば、(5)の問題は解消されるのではないか、と思われます。また、中国への経
済支援の一つのあり方ともなり得るのでは、と考えます。模倣品対策費用の大半部分
が、現地の代理人費用などを通じて中国の外貨収入になります。模倣品の製造販売の
途が押さえられることによる損失を中国経済が被るとしても、適法な商品が中国国内
にあるのであれば、その需要がその分拡大することになります。模倣品対策費用によ
る外貨収入は、中国国内需要の拡大にもつながります。

健全な市場経済の発展に寄与する経済援助の一形態、という捉え方を日本政府が持つ
ことができれば、模倣品対策援助費用の大幅な拡大の実現も可能では、と思われます。
中国政府も、知的財産を保護する制度は作り上げたのであるから、利用する側がどん
どん利用して欲しい、と表明しています。日本政府が新たな対中国経済援助として、
JETROさんなどを通じた「模倣品対策による健全な経済発展のための援助」を拡大し
たとしても、それは中国政府の望む経済の健全化を外国の費用で支援するもの、なお
中国政府の意に沿ったもの、ということができます。歓迎されるべきものであろう、
と考えます。

6.中国ビジネスの失敗なき発展を願って..

経済発展を続ける中国は、世界の工場としてだけではなく、世界の市場としての重要
性をも益々増してきている、と言えます。日本について言えば、日本から中国への輸
出額(1,096億ドル)は、米国への輸出額(936億ドル)を、既に上回っています(経
済産業省経済産業政策局調査課担当官氏による講演 (2010年7月23日大阪天満橋) 資
料より;出所として"World Trade Atlas(2009年)"と表示)。2008年に始まる世界不
況の影響を、我国において幾分か和らげる緩衝材としての役割をも果たしているもの
と思われます。中国ビジネスは、模倣による被害という負の側面だけでなく、日本経
済にとって既に米国とも並ぶほどの重要な位置を占めるに至っている、と言えます。

そのような中で、中国から製品購入の引き合いを受ける中小企業さんも少なくないよ
うで、引き合いのあった企業さんから、知的財産の観点から注意すべき事項について、
相談を受けることがあります。ものまね(模倣)の恐れを考慮しての相談です。

上記3.の通り、特許権等の知的財産権を取得すべく、製品販売に先立って出願をす
ることが、まず原則と言えます。販売された製品を分解して中身を調べること(リバ
ースエンジニアリング)は、日本でもそうですが、中国でも合法とされています。販
売した物について、扱いに制限を加えることはできませんので、特許権等では守れな
い、しかし守りたいノウハウ部分があれば、ブラックボックス化する(分解すると壊
れて詳細が分からなくする、など)といった工夫が、製品に必要であろうと思われま
す。

製品を見ただけでは分からないノウハウについては、尋ねられても教えないことも肝
要であると言えます。技術者さんが応対に出ると、自社の技術の優秀性を知ってもら
おうとして、ノウハウまでペラペラとしゃべってしまう、ということがある、と聴き
ます。相手は購入先であって、製造委託先ではないのであれば、技術内容まで問われ
るままに答える必要はないはずです。製造委託先であっても、秘密保持義務を契約に
盛り込んで、その範囲で、ということになります。

購入先であれば、製品の使い方と、利点とをうまく伝えれば足り、隠された技術、特
に製造技術まで口にする必要は全く無いものと考えます。そのことは、例えば試供品
の提供の依頼があったときに、あらかじめ伝えておくのが良いのでは、と考えます。
それを期待しているのであれば、何か反応があるかもしれません。技術を知り尽くし
た技術者さんが応対なさるより、渉外に慣れた営業担当者さんが応対なさる方が宜し
いのでは、と思われます。

製造ノウハウも無い、製品を手にすれば誰でもまねできる、という製品であって、特
許権等も無いのであれば、ものまねを防ぐことはできないだろう、と思われます。も
しも日本に特許権があるのであれば、模倣品が日本に上陸すれば、日本の特許権で排
除することもできるでしょうが、言うまでもなく、中国国内での製造、販売行為、他
国への輸出行為を抑えることはできません。

上記1.の通り、中国では、製品の機能だけでなく、商標や包装までも模倣して、真
正品と見間違うようにして、ニセモノを掴ませるやり方が少なくありません。日本ブ
ランドは人気が高い、という現実がありますので、これを悪用しようという狙いのも
のが多いということであろう、と思われます。

そうであれば、商標について、中国で権利を取得しておくことは、製品の模倣防御の
一つともなり得ます。出願が遅れると、目先の効く中国の内国人に先取り出願されて、
自社の商標が中国では使えなくなる、という恐れもあります。

なお、ノウハウや特許発明などの技術を中国企業にライセンス供与する場合には、模
倣対策として、(1)秘密保持義務を、契約期間満了後を含めて、契約に盛り込むこと
の他に、(2)契約は契約書を作成すべきこと(法上の要請)、(3)3種の官庁へ登録・
届出を要すること、(4)ライセンス技術の実施が他人の権利侵害に該当するとして訴
えられたときには、ライセンス供与側が責任を負うべき法上の規定があること、(5)
実施料の支払いは、外貨送金可能な円又はドルによりするよう定めるべきこと、(6)
紛争解決法として、裁判よりも、執行力が日中間で相手国にも及ぶ仲裁を定めるのが
望ましいこと、など、特別な配慮を要します(弁護士法人フラーレン・谷口由記(よ
しのり)弁護士・弁理士著「中国進出における委託加工貿易、技術ライセンスの契約、
商標に関するQ&A集」日本貿易振興機構(JETRO)発行より)。


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